地球温暖化というのはもしかすると少しずつ地球が暖かくなっていくというのだけではなく、気候変化の乱調という側面も含んでいるのかと思えるほど、今年の冬は厳しい寒さが続いている。
 例年通り札幌も雪まつりが始まった。昨年は暖冬だったので融けかかって汗をかいている雪像の補正に大変だったらしいけれど、今年はいつになく荒れ模様も少ない上に寒さが厳しいこともあって順調な仕上がりを見せているとの報道があった。

 今年の雪まつりは2月の5日(火)から11日(月、建国記念の日)までの一週間である。毎年雪像の写真を撮ってきてはホームページで発表しているので、今年も時間を見つけなければならない。気ままな写真だし特にテーマを決めての撮影でもないので、荒れた天気よりは晴れた方が気楽である。さいわい天気予報によればどうやらこの期間中はおおむね晴天が続くようである。
 いつ暇ができてもいいように、デジカメのメモリーに残っていたこれまでの撮影データをパソコンに移して空っぽにしておき、万一に備えて予備の乾電池も用意した。カメラを毎日持ち歩くことは少し邪魔にはなるけれど、通勤カバンに入れておけば望むときに事務所からでも自宅からでも雪まつり会場へと直行することができようというものである。

 初日、二日目が過ぎた。春の彼岸はまだまだ一と月以上も先のことだし、寒さも今ごろが一番厳しい時期ではあるが、それでも目覚める6時台の空は確実に明るさを増してきている。寒さはともかく、光の春が到来しつあることは毎朝の目覚めで確実に知ることができるようになってきた。特に晴れている夜明けには一段とそれと知らせる信号がある。

 7日、新聞を読み終えた目に東の空からの朝日がまぶしい。外は寒そうだがいいタイミングである。近くの地下鉄駅へと足を進める。例年どおり大通り会場を目指したけれど、他にススキノと北区のサトランドでも祭りは行われている。サトランドは少し遠いけれどススキノなら乗り換えの必要はあるものの地下鉄大通り駅から一つ隣の駅である。そこまで足を延ばすことにする。
 ススキノは札幌の夜の繁華街であり全国的にも有名な場所だが、事務所を西区に開いてからはめっきりと訪れる機会が減っている。それでもネオンの消えた朝日のススキノは夜とは違ってどことなく白っぽい雰囲気を漂わせているけれど、闇を背景にした原色の彩とはまるで異なった独特の雰囲気が匂ってくる。

 道路の中央を使っての会場なので大通りのような巨大な雪像は望むべくもなく、氷の彫刻がいくつも並んでいる。恐らくは夜になればネオンに反射する氷のきらめきが酔客を一層呼び寄せるのだろうけれど、まあ今日は青空が背景である。きりりと冷え込んだ空気がさわやかである。

 ススキノからは地下商店街(ボールタウン)が大通公園へとつながっている。平日の10時前のこの時間帯、ほとんどの店が開店前で開いているのは僅かに喫茶店くらいなものだ。それでもモーニングサービスの時間帯なのだろうか、けっこう多くの客が座席を埋めているのに少し驚く。

 地下鉄の大通り駅まで地下街を歩いて、そのまま直角にテレビ塔まで足を延ばす。テレビ塔は大通りの1丁目に位置し、その足元から雪まつりの雪像が始まる。地下鉄の大通り駅は4丁目界隈にあるので、1丁目までススキノからの通路と同じような地下街(オーロラタウン)が通っていて、そのままテレビ塔の地下までつながっている。
 テレビ塔を訪ねるなんて何年ぶりだろうか。地下街の開店準備の店々とは裏腹に、ここではなんと居酒屋が開店しており、カウンターにはジョッキを傾けている老夫婦らしいカップルの姿があった。

 地上へ出て、ここから12丁目までが大通り会場である。大小様々な雪像や氷像が会場を埋め尽くしている。自衛隊まで参加しての雪像作りは雪の像と呼ぶよりはブルドーザーやダンプカーを使った土木工事そのものだが、それでも今年もきれいに仕上がった。
 雪像の数々は既に発表した私のホームページの画像を見て欲しいが(写真集「札幌雪まつり」参照)、澄んだ空気、青空、陽光、そしてきりりとした寒さは雪まつりにふさわしい雰囲気を醸し出している。

 12丁目の市民の手による雪像群を見て雪まつり会場は終わりである。13丁目には石造りの札幌市資料館がでんと居座っている。この札幌軟石で作られた建物は、かつての札幌控訴院(つまり高等裁判所)であり、入り口の門の上にある女神の像と右から左へと彫られた「札幌控訴院」の文字が僅かにそのことを伝えている。
 この女神テミス像(上の写真参照)の目隠しは先入観や予断のない裁判を、左右の剣と天秤は法の厳しさと法の公平を示していると言われている。
 今はどんな展示をしているのか分からないが、少し前まで札幌文学館として北海道ゆかりの作家の様々を伝えてくれていたことを思い出す。

 ここまでで大通りの雪まつり会場は終わりである。近くの教育文化会館でトイレを借りて、そのまま大通りと平行に走る北一条通のバスで事務所のある琴似へ戻ることにしよう。時刻はそろそろ昼に近く、コート越しの日差しが暖かい。天気予報は雪まつりの終了と同時に大荒れの冬将軍の到来を伝えているが、ともあれ今日は穏やかである。



                          2008.2.12    佐々木利夫


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