統一地方選挙が始まった。4月7日の投票日に向けて、北海道知事、道議会議員、札幌市長、札幌市会議員の4つが同時に選挙される。ただし、私の住む札幌西区は定数内の立候補者数だったので、市会議員は無競争で当選が決まり選挙はない。

 これでまたぞろ騒がしい選挙運動が始まるのかと、いささかうんざりしていたのだが、私の地域は市会議員選挙がなくなったせいか比較的静かである。

 その北海道知事選挙は、全国で唯一の与野党対決の地区になった。自民党と公明党が連立を組む国会での与党勢力に対し、立憲民主党や共産党などの野党が一致して対立候補を立てたからである。

 その与野党のそれぞれが掲げるキャッチフレーズの中で、野党連合が掲げた中に「北海道独立論」があった。それを聞いて、どこかその言葉と野党が意図する内容とがどうもそぐわないように感じたのであった。

 恐らく野党の主張する「北海道独立」は、いわゆる「日本から独立した独自の国家を設立する」と言う意味ではなく、「中央集権たる国会与党の言うがままにはならない北海道」と言う程度の軽い意味なのだとは思う。たとえばかつて言われたことのある真の意味での「北海道独立論」、つまり日本から独立して「北海道国」を作ろうというほどの意気込みではなく、単に国政に過度に依存しない自立する北海道にしたい、そんな程度の軽い意味なのだとは思う。

 そうした意味では、例えばかつて帯広方面で囁かれていた「十勝モンロー」みたいに、十勝の農業地帯を「十勝地区」として北海道行政たる道庁から少し距離を置こうとする考えに似ているのだと思う・

 そうは思いつつも、だとするならこの「北海道独立論」という言葉は、余りにも重過ぎるのではないかと思えたのである。そして「北海道独立論」という言葉が本来持つであろう貴重な意味を、汚すというか軽んじてしまったのではないかと思ったのである。つまりはこの語をあまりにも、不用意に使ってしまったような気がしたのである。

 言葉は変化していくのだし、使われているうちに磨耗し本来の意味から薄れていくものだと分かっているつもりである。ただそうは言っても、本来の意味から余りにも離れてしまうような使い方は、避けるべきでないかと思えたのである。そんな軽い意味で、この「北海道独立」という言葉は使って欲しくなかったと思ったのである。

 この言葉を採用したことで選挙にどんな影響を与えたか、私にはまるで予想はつかない。立憲民主党を中心とした野党連合が、与党に対峙する言葉としてこの言葉を持ち出した意図が分からないではない。与党に対決する姿勢を示すために、国政与党とは一歩距離を置く意味を与えようとしただろうことは理解できる。

 それでもこの言葉を軽く使ってしまったことで、本来「北海道独立」という語が持っている気迫の力が、有権者に訴求する力を失ってしまったのではないかと思えたのである。使ったことが有権者の反発を招くとまでは思わない。それでも、野党が今回主張している「北海道独立に込めた意図」と、どこかちぐはぐになってしまったように思えたのである。

 つまり、「北海道独立論」という言葉が持っている訴求力が、野党の思惑とは裏腹に有権者には届かなくなってしまっているのではないかと思ったのである。

 統一地方選挙の投票日は4月7日(日)である。即日開票と言われているから、来週の今日は既にその結果が出ているだろう。北海道は、どちらかというと革新系の強い地域だと言われている。それでも野党は言葉の選択を間違ったような気がしてならない。野党支持者に野党候補へ投票を誘導するにしては、この「北海道独立論」という投げかけは、弱いどころかその力を失ってしまったのではないか、そんな気がしてならないのである。

 そしてそしてこうした使いかたが、「北海道独立論」という言葉が本来持っていた、開拓精神とも言うべきスピリットに満ちた新進気鋭の意気込みを、逆に矮小化させてしまったように思えたのである。

 これからも色々な場面で「北海道独立論」という言葉は、「北海道頑張れ」との意気込みを込めて使われる機会があると思う。そうした時、この言葉が今回の選挙のキャッチフレーズで使われたことで、この言葉の持つ気迫が、どこか元気に欠けるような方向に作用してしまっているのではないか、そんな恐れを感じて仕方がないのである。

 「北海道独立論」を利用したことで、その言葉の持つ力が発揮される前に薄汚れてしまったのではないかと思えたのである。つまり、今回の選挙でこの「北海道独立」という語が使われたことで、選挙にも、そして「北海道独立」という言葉そのものにも、マイナスの効果を与えてしまったのではないかと、私は密かに思っているのである。


                               2019.4.1        佐々木利夫

 これが直接の原因ではないとは思うけれど、北海道知事選挙は与党候補の勝利となった。しかも大差というほどではないにしても、162万票対96万と与党が63%を占めた。革新系の強いといわれる北海道で、野党は共産党まで巻き込んで連合して候補を一本化した。少なくとも野党の声は、惜しいという間もないほど届かなかったのである。                2019.4.8        佐々木利夫


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北海道独立論