ひ と り 「風に立つライオン」(さだまさし)によせて 男は一人の女を愛しぬくよりも、 アフリカの医療に身を投じることが 自分の使命であり世界を救うことだと信じ、 女は 一人の男のために豆腐をさいの目にきざみ、 黄昏の公園を一緒に散歩することだけを願っている。 多分どちらもその真剣な分だけ 絶望的なほどにわがままで ひとりよがりなのだろうけれど、 人はいつも何かを選び、 それと引換にそれと同じくらいの 何かを失うものなのかも知れないと、 この曲を聞きながらポツンと思うことがある。 ひとりのへやで いつものように部屋に帰って ポツンとソファに腰かけて ふと見た鏡の顔に不意に泪が浮かんできて 突然の泪に我知らず驚き、そして慌て 哀しいことなんかひとつもないのに 泪が出ると泪のぶんだけ哀しくなって さりげなくドアキッチリ閉めて、窓閉じて テレビの音ちょっと上げて 灯りを消して、ベッドに顔つけて ・・・・ワァワァ泣いて 駄々っ児のようにひたすら泣いて・・・ 泪が乾くと少し顔が痒くなって こころがとっても可愛くなって・・・ ひとりの目覚め ふと気づいた小さな嬉しさを、 しみじみと味わう一人の夜があります。 胸の奥の小さな悲しみを、 やさしく見つめている独りのソファの時があります。 青空の気配をかすかに感じながら、 うとうとしている日曜のひとりの目覚めがあります。 なぜか、何もかもが心に染み込んでいって 「風さんこんにちわ」と言いたくなる そんな街路樹のひとり歩きがあります。 しみじみとひとり 哀しみには静かな雨がよく似合う 哀しみの中にある 哀しむ自分をいとおしむ小さな心を 大切に・・大切に育てたい・・・ 哀しいほど自由、と唄ったのはだれだったろうか ひとりだけの哀しみを しみじみと味わう、そんなゆとりが ときに・・・嬉しい・・・・・ 街角ひとり 時として、自分の気持ちが驚くほど 素直になっていることに気付くときがある 普段見過ごしている街角の風景がとても新鮮で、 バスを待つ園児の表情がこんなにも美しく、 瞼を通す太陽が素敵に暖かく、 聞き慣れた曲にも気づかなかった情感を感じ、 野辺の雑草にもみんな名前があることに驚き、 日曜の朝の青空におはようと声をかけたくなり、 バスのステップを弾むように駆け上がり・・ こんな気持ちになることがあったら、 今日はきっと 素敵な日になります ひとりのあかり 消し忘れの部屋の灯りが 真夜中のひとりの私を待っている 誰もいるはずないと分かっているのに ドアの鍵まわす このひそかなときめきはなんだろう ・・・・・・・ ゆっくりと後ろ手でドア閉めながら 昨日と同じ時のよどみの中で なぜか無性に肩吹くこの風を だれでもいい、分かってもらいたいと
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