CDラベルも詩

 ここ数年、毎月1枚の音楽CD−R作りに凝っている。このラベルにつけるタイトルもまた、短い詩の一つだと感じている。俳句や短歌とは並ぶべくもないが、ひとつひとつを大切にしていきたい。

                    トップ  ひとり言

                  平成24年8月〜25年12月
 そろそろマンネリだなと感じてはいるのですが、これからもしばらくはCDの自作を続けていこうと思っています。それはそれでいいいんだけれど、問題はこれからの一年のタイトルのテーマです。数年続きのパクリのせいで、オリジナルが浮かんできません。それで今回も同様の手法を続けることにしたのですが、どうせならこれまでの詩や俳句などから少し離れて小説の分野まで踏み込もうと思います。それで今年は宮沢賢治です。まあ、彼の創作は一種の詩でもあると思いますが・・・。宮沢賢治のタイトルを12月まで続けることにしました。
11月を以って私のCD作りを中止しました。ファンだった仲間が亡くなって、作る気力がなくなってしまったのも原因の一つです。長い間のご愛顧を感謝します。
11月 どなたもどうかお入りください 決してご遠慮はありません   宮沢賢治「注文の多い料理店」から
10月 青白く光る銀河の岸に、銀色の空のすすきが、         宮沢賢治「銀河鉄道の夜」から
 9月 どっどど どどうど どどうど どどう                宮沢賢治「風の又三郎」から
 8月 雨ニモマケズ 風ニモマケズ・・・                  宮沢賢治「雨ニモマケズ」から
 7月 けふのうちにとほくへいってしまふわたくしのいもうとよ・・・   宮沢賢治「永訣の朝」から
 6月 ひなげしはみんなまっ赤に燃え上がり、めいめい風に・・・   宮沢賢治「ひのきとひなげし」から
 5月 ゴーシュは町の活動写真館でセロを弾く係りでした・・・    宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」から
 4月 苔いちめんに、霧がぽしゃぽしゃ降って、蟻の歩哨は・・・   宮沢賢治「ありときのこ」から
 3月 グスコープドリは、イートハーブの大きな森のなかに・・・   宮沢賢治「グスコープドリの伝説」から
 2月 一番書記は白猫でした、二番書記は虎猫でした、・・・     宮沢賢治「猫の事務所」から
 1月 遠くの百舌の声なのか、北上川の瀬の音か、・・・       宮沢賢治「ざしき童子のはなし」から
12月 「もう、さようなら、サンタマリア」とこう言った。・・・       宮沢賢治「オッペルと象」から
11月 ガタンコガタンコ、シュウフッフ、さそりの赤眼が 見えたころ、宮沢賢治「シグナルとシグナレス」から
10月 まもなくバリバリ呼び子が鳴り、機関車は一つボーとほえて  宮沢賢治「氷河鼠の毛皮」から
 9月 クラムポンはわらったよ クラムポンはかぷかぷわらったよ  宮沢賢治「やまなし」から
 8月 凍み雪しんこ、堅雪かんこ、野原の饅頭はポッポッポ。    宮沢賢治「雪渡り」から


                   平成23年8月〜24年7月
 今年も8月になりました。相変わらず毎月1枚、Jボップ系の新譜を集めたCDを自作しています。さて今年の自作CDのタイトルを決めなければなりません。ここ数年他者からのパクリが続いていますが、今年も私の書棚から選ぶことにしました。最近はご無沙汰しているのですが、一時期はまったものです。この一年は、山頭火と付き合ってください。
 7月 分け入っても分け入っても 青い山                  山頭火
 6月 けふもいちにち 風をあるいてきた                 山頭火
 5月 てふてふ うらから おもてへ ひらひら              山頭火
 4月 あるひは乞ふことをやめ 山を観ている               山頭火
 3月 笠へぽっとり 椿だった                        山頭火
 2月 鴉啼いて わたしも一人                        山頭火
 1月 一つあれば事足る 鍋の米をとぐ                   山頭火
12月 雪へ雪ふる しずけさにをる                      山頭火
11月 こゝろつかれて 山が海がうつくしすぎる              山頭火
10月 いつも一人で 赤とんぼ                        山頭火
 9月 うしろすがたの しぐれてゆくか                    山頭火
 8月 捨てきれない 荷物のおもさ まへうしろ               山頭火


         平成22年8月〜23年7月
 8月ってのは毎年やってくるんだと、CDタイトルのキーワードを決める時期になるとふと気づかされます。この一年も昨年の俳句と同じ手法で、今度はお気に入り詩人からの一節をパクルことにしました。そのフレーズを探しながら、我が書棚にもけっこうたくさんの詩人が眠っていたことを改めて知らされています。
 7月 青春はすぐにとび去る。人生はすぐにかたむく。希望さえ、・・・     バイロン
 6月 光る地面に竹が生え、青竹が生え、地下には竹の根が生え、・・   萩原朔太郎
 5月 春の日ののどかなれども わが心 わが心 かなし・・・    ハインリッヒ・ハイネ
 4月 まだあげ初めし前髪の林檎のもとに見えしとき 前にさしたる花櫛の・・・島崎藤村
 3月 秋の日のビオロンのためいきの 身にしみてひたぶるにうら悲し・・・ ヴェルレーヌ
 2月 太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。次郎を眠らせ、・・・    三好達二
 1月 とうとう見つかったよ なにがさ? 永遠というもの。・・・  アルチュール・ランボー
12月 さむいね。ああさむいね。どこがこんなに切ないんだろうね。・・・   草野心平
11月 退屈な女より・・もっと哀れなのは忘れられた女なのです マリー・ローランサン
10月 マッチ擦るつかの間海に霧ふかし、身捨つるほどの祖国やありや   寺山修司
 9月 私の耳は貝の殻、海の響きをなつかしむ              ジャン・コクトー
 8月 かなしい心に夜が明けた、うれしい心に夜が明けた           中原中也


              平成21年8月〜22年7月
 今年も8月がやってきました。これからの一年のキーワードを決めなければならないのですが、そろそろネタ切れの感がします。
 それで他人のネタを拝借することにして、女性俳人の句を引用することにしました。特に俳句に興味があるわけではないのですが、それでも俳句の枯れた味わいに惹かれるものがあります。こうして文字だけにしてしまうと単なるパクリですが、本体はプリンタぶるCDに絵つきで書き込んでいるのでそれなりの面白さもあります。
・ 7月・・・かなかなが 沁みるひとりの 浴衣干す  中山純子
・ 6月・・・朝となりゆく 静けさに 遠蛙         有馬かず子
・ 5月・・・散る景色 少しも見えず 遅ざくら      下村梅子
・ 4月・・・ひとつこと 思ひつめゐて 残る雪      檜 紀代
・ 3月・・・ふだん着で ふだんの心 桃の花      細見綾子
・ 2月・・・生き直す こころ ほつりと 白桔梗     河合照子
・ 1月・・・受話器置く しばらく耳のあたたかし    柴田佐知子
・12月・・・人を励まし 実はおのれへ十二月      平井さちこ
・11月・・・何のむなしさ白菜白く洗ひあげ        渡辺千枝子
・10月・・・ひとり祝ぐことなり秋刀魚一尾買ふ     殿村?絲子
・ 9月・・・このままの晩年でよし蝸牛          石田あき子
・ 8月・・・じゃんけんに 負けて 蛍に生まれたの  池田澄子  


            平成20年8月〜21年7月
  退職して10年になり、ひとりの事務所暮らしもそれなりさまになってきつつあります。
毎年様々なテーマをキーワードに選んで一言を作ってきましたが、これからの一年は「ささやき」に
こだわりたいと思います。人にはどんなときでも、ふと気づく様々があります。改めて感じる小さな発見を追いかけたいと、そんなことを考えています。
 追記・今季のキーワードは「ささやき」のつもりでしたが、いつの間にか昨年と同じ「足音」になってしまいました。それもまたよし。このまま続けましょうか・・・。
・ 8月・・・夏雲に風のささやき、ななかまどの少し色づいて
・ 9月・・・戸惑いの泪は秋色をしている、揺れるコスモスに風のささやき
・10月・・・落葉が知らせる風の足跡、一人の足音は黄昏のささやき
・11月・・・木枯らしはもう少し先、足音だけが残された街へ・・・
・12月・・・襟足を吹き抜ける風は足音、いつもの風がいつもの道へ
・ 1月・・・雪積む夜はためらいの足音、北斗の輝きオリオンの滴り
・ 2月・・・日差しがくすぐる優しさの匂い、節分の足音に耳すまし目を閉じる
・ 3月・・・季節の移ろいは人に似ている、足音に残る不意打ちのおもかげ
・ 4月・・・人はたくさん歩いてきた、一つ一つの足音に今を重ねて
・ 5月・・・桜訪ねる足音に、去年(こぞ)を重ねてまた桜
・ 6月・・・風が伝える遠い足音、流れに身を映しつ歩み重ねつ
・ 7月・・・思い出も足音と同じさ、いつもいつも彼方へと消える


            平成19年8月〜20年7月 
  そしてまた新しい一年がめぐってきました。こうして8月〜7月を一つの区切りとしたのは
退職した平成10年7月の翌月にCD作成をスタートしたのが原因ですが、さてこれからの一年
のテーマを色々考えつつ「足音」にしました。自分の足音も、遠く背後から聞こえてくる足音も、
ともに私の足音です。
・ 8月・・・秋の気配の中にあのときの足音を聞いている
・ 9月・・・そうに決まっている・・・、足音に振り向いて薄暮風ばかり
・ 10月・・・聞こえてくるのは私の足音、歩道に響くひとり、黄昏のひとり
・11月・・・枯葉踏む足音に、足音だけの時を懐かしんでいる
・ 12月・・・木枯らしに肩すくめ、この公園に足音の絶えたまま
・ 1月・・・降りつむ雪に足音も消え、静黙の中に私がいるよ
・ 2月・・・降りつむ粉雪は春への足音、そんな琴似の雪あかり道
・ 3月・・・少しずつ、少しずつの足音が、小さなぬくもりを連れてくる
・ 4月・・・風が微笑を運んでくる、はずむ足音に水音の強く弱く
・ 5月・・・花が運ぶのは香りだけではない、過ぎしことどもの足音のあれこれが
・ 6月・・・足音に小さく逃げてタンポポ、綿毛の行き先の知る人もなく
・ 7月・・・夏空に雲のおにごっこ ふと止める足音に葉ずれさやさやと


            平成18年8月〜19年7月 
  このページに追記しながら、また新しい一年が始まったことを自分自身に
 言い聞かせています。この一年のテーマは「懐かしさ」しようと考えています。そんな年齢に
なったということでしょうか。
 
・ 懐かしきは八月の雲と風と、触れぬ思いの過ぎ行くままの
・ 秋風のかたわらに九月の声、懐かしさにふと耳かたむけて
・ ふとためらひの十月が来た、懐かしさなんぞ欲しくはないと・・・
・ 懐かしさはいつも重たい、十一月に落葉吹き抜けるかさかさと
・ 十二月は紫色をしている。泪色の懐かしさこそ振り向きざまに
・ 一月はいつも気まぐれ、追いつけぬ懐かしさは心もとない窓辺の雪か
・ 二月の雪こそ光のいたずら、立つ春に懐かしさのまぶしさよ
・ この陽射し覚えているさ、三月の暖かさに懐かしさの一つ二つ
・ 四月の囁きにふと思い出す、懐かしさの重ね重ねを・・・
・ 遠い五月の遠い懐かしさ、途切れ途切れに暖かさだけの後押し
・ 六月をゆるゆると歩く、忘れそうな小さな思い出抱えつつ
・ 七月のさらさらとした陽射しに、あの懐かしさだけの影絵おろおろと


           平成17年8月〜18年7月               
   新しい1年が始まりました。「人恋しさ」をキーワードに綴っていこうかと
  思いつつ、同時に荷が重いなとも感じています。
・ 人恋しきは風のたわむれか、かの八月もいつか遠くなりて
・ 夕焼けは人恋しさの名残の色か、九月の雲に秋風の囁き
・ 人恋しさに秋風の通せんぼ、途方に暮れる十月に肩すくめつつ
・ 人恋しさは寄る辺なき水の流れか、発寒川の十一月に木枯らしの吹く
・ 十二月は雪のおしゃべり、人恋しさを伝え伝えて
・ 一月の背中もいつか思い出に変る、人恋しさの手ざわりを残して
・ 想うだけでは伝わらない、人恋しさの二月に肩すくめつつ
・ 人恋しさの消えぬ三月 名残りの雪、舌先で追いかけてみる
・ ひとつなくして、ひとつ見つける 四月の風に人恋しさのあてどなき
・ 人恋しさに五月はめぐり、孤独も時には食べ飽きる・・・
・ 気配の中に六月が過ぎ、人恋しさはためらひの湖に漂ふ
・ めぐる七月のめぐる思いの、あまりにもしおらしき人恋しさよ

平成16年8月〜17年7月
この1年は、「しみじみ」をキーワードにしたい考えています。
この言葉の情感をどこまで実感できるのか、ふと、
この言葉を選んだそのことに年齢を感じています。
・ しみじみと風の八月、過ぎる想ひに頬をなぶらす
・ 黄昏に肩ひそめ、想い出に酔う九月しみじみと
・ 紅い実の告げる十月は、夕日背に影の長さしみじみと
・ 十一月は忘却の香り、舞う落ち葉、踏む落ち葉しみじみと
・ 十二月は遠い日の数え歌、肩の雪そのままにしみじみと
・ 一月よ、凍てつく空よ白の吐息よ、踏みしめる雪道遠くしみじみと
・ 二月の風は春のささやき、閉ざすくちびるのほころびしみじみと
・ 琴似はなぜか哀しい街です、三月の光あふれるほどしみじみと
・ 涙はやがて風に乾いていく、四月の心そのままにしみじみと
・ さくら過ぎる風のかほりに、この五月遠い五月・・・しみじみと
・ 六月の空はあなたに続いている、声もぬくもりも・・・しみじみと
・ 心だけしみじみとして、もの哀しさに七月は遠く・・近く・・

平成15年8月〜16年7月
人はいつもひとりだし、だからこそひとりでない時を望み、
そしてひとりを感じてしまう。
「それぞれ」は人の宿命め、「それぞれ」は人の生きざま・・・・
 八月に俯いて歩く、それぞれの傘それぞれの想い
 九月に揺れるコスモス、それぞれの想いに風の吹く
・ 十月は風の誘惑、夕暮れの落ち葉それぞれに
・ 十一月に銀杏が燃えて、それぞれに落ち葉のさだめなき
 十二月は雪のななかまど、想いつもり夢つもりそれぞれに
 一月に光舞いそして雪が輝く、足跡はあなた道はあなたそれぞれに
・ 二月に歩く雪まつり、凍てつく吐息にそれぞれの思い
・ 三月のこんなにも明るい陽射し、解けない想いそれぞれを背に
・ 四月の扉を川面の風が訪れる、ほころぶ花、閉ざす心、それぞれに
・ 五月のいまを歩いている。風、それぞれに歩いている
・ 六月の風は自分色、乱舞の想いそれぞれに
・ 七月の風、七月の雲、背負う想いそれぞれを乗せて

平成14年8月〜15年7月
「泣き虫」をテーマに揺れ動く心の襞を推し量ってみました
・ 八月のあなたはなぜか優しい、だから私はいつも泣き虫
・ 九月の雨に濡れている子猫、だから私はいつも泣き虫
・ 十月の病葉はあてどない私、だから私はいつも泣き虫
・ 十一月のひとりの傘に雪降り積む、だから私はいつも泣き虫
・ 十二月は嬉しくて哀しくて切なくて、だから私はいつも泣き虫
・ 一月の雪に揺れるブランコ、だから私はいつも泣き虫
・ 二月の雪に想い降り積みそして降り積み、だから私はいつも泣き虫
・ 三月になったのに消せない想いが残る、だから私はいつも泣き虫
・ 四月の私見えてますか声聞こえてますか、だから私はいつも泣き虫
・ 五月の山道はひとりしずかがひっそりと、だから私はいつも泣き虫
・ 六月にアカシヤ咲いて六月にアカシヤの散る、だから私はいつも泣き虫
・ 七月の紫陽花に心移ろふ、だから私はいつも泣き虫

平成13年8月〜14年7月
「風」をキーワードに、別れの予感、別離、未練、諦めそして
新しい出会いを季節の中に織り込んでみました
・ ふと風に気づく八月は秋桜の揺れる季節で・・・
・ 不意に無口になる九月の夜明け、・・・風が哭いている
・ 寒くなったね、ポツンと呟く背中に十月のすきま風
 もう戻れないの? 聞いてみた木枯らしに11月は雪ばかり
 こんな12月の吹雪の中で、私はひたすら小さくなっていよう
・ 一月のひとりの風は冷たいけれど、オリオンに向かって立っている
・ 心なしおだやかな2月の風に、あの頃を遠く感じている
 止まる風に日差しがあたたかい、あぁ・・・・三月だね
・ 追いかけてみようか4月の風に、昨日までの私脱ぎすてて
 もう一度だけ優しさを信じてみようか。5月の風は柔らかいから
・ 6月の風が静かな雨を運んでくる、赤い傘に並んでいる
・ 7月の風は弾む風・・・・、新しいエプロンそっと確かめる


平成12年8月〜13年7月
「歌、唄」をキーワードに移ろう季節を折り込んでみました。
・ イアリングから八月の歌が聞こえる
・ ほら、九月の歌がななかまどを染めていく
・ 雪虫からの便りは十月の歌声
・ 氷雨が唄う十一月・・、雨宿りの場所がない
・ しんしんしん・・・、降りつむ雪の中から12月の歌が聞こえる
・ キリリと冴える1月の、めざめの歌を少しだけ・・・
・ 2月ひっそり春の匂ひ、歌にもひそかな春の匂ひ
・ 新しい春がやつてきたよ、三月の歌声に弾んでいるよ
・ 土筆の萌える陽だまりは4月の歌の予約席
・ たんぽぽ、たんぽぽ、5月の唄だよ
・ アカシヤの唄う6月には、かすかな別離の予感がある
・ こんなにも切ない七月の、切なさだけの歌をうたおう