421 ほたる 新聞切り抜き 時期不明

 「・・・平安期の女人たちは蛍を燃える恋情の化身として捉(とら)えた。あるいは恋の小道具としても身近に蛍が使われている。伊勢物語・・・では・・・蛍の光を車に放って女人の顔を覗(のぞ)き見ようとする話がある。蛍はまた死者の魂とも考えられてきた。・・・野辺の送りに飛んできて額紙に止まった蛍を死者の幻と感じたり、亡き子の霊に籠のなかの蛍を放してやる。死者の血族たちの非日常の空間に光りながら舞う蛍の幽玄性」(李 正子・イ・チョンジャ ほたるの歌 北海道新聞)

422 まがいもの温泉 新聞切り抜き 時期不明

 「・・・悪貨は良貨を駆逐するという。温泉についても然り。ここ数年激増してきたまがいものの温泉の現状・・・、玉石混交の温泉の中からまっとうな温泉を見つけて、・・・。脱衣場に掲示されている『温泉分析表』・・・北海道ではいまだに昭和3、40年代のものまで見かける。つまり一度分析したら半永久的とかんがえられている嫌いがあるのだ。・・・最低10年に1、2度は分析し直したものを掲示するよう道は指導すべきだろう」(旅行作家 松田忠徳 まがいもの多い公共温泉 読売新聞)

423 笑顔が消える 新聞切り抜き 1997.10.8

 「月間芸能雑誌(の)表紙の写真(が)・・・1990年前後から、表情が一変しているのに気付く。はち切れんばかりの笑顔から、口を閉じたむっつり顔へ。・・・現代の若者たちに・・・笑顔が象徴したようなおおらかさは受容されない。・・・スマイルを否定する若者の姿勢は、周囲の人たちとの連帯を、真っ向から拒絶しているともとれる」(新聞記事 「にっこり」笑顔若者から消失? 日経)

424 偏見 新聞切り抜き 1998.1.4

 「・・・偏見、男女差別、運、こういったものの存在を、今の日本は許さない。男性と女性が決して同じ能力ではない、ということも今の日本では認められにくい。しかし或る分野では男性が優れ、別の分野では女性に向いている。だから男女が同じことを同じ数でせよ、ということは愚かなことだというのが、私の偏見である。偏見というものは、それが個性なのだ」(作家 曽野綾子 憎しみとの遠い戦い 新聞名不詳)

425 躁病 新聞切り抜き 1997.10.15

 「・・・躁うつ病といっても、『哀』一色に染まるうつ病だけのケースが現実には多数。躁病とうつ病の双方がある患者は意外と少ない。まあ、躁病が少ないというより、軽い躁状態など目立たない社会に私たちは生きている。憂(う)き世を知らぬ子供時代ならともかく、日常は面白いことは少々、つまらないことがいっぱい。それでもカラ元気をかき集めて学校や職場へと向かう。明朗・快活で精力的と評判のサラリーマンも、家でもそうだとは限らない。つまり、人はだれでも軽躁の衣を装い毎日暮らしている」(精神科医 渡部正行 北海道新聞 心のぞけば)。

426 サラリーマンの末路 新聞切り抜き 時期不明

 「自己責任原則という言葉をよく聞くようになった。・・・自分のことは自分で責任を負うべきだーなんて、当たり前過ぎて問題になるほうがおかしいと思うのだが、そうでないところが温情主義、日本の良いところであり、また悪いところなのだろう。・・・おかげでサラリーマンのほうも『会社は悪いようにはしないはず』という甘えに安住してしまった。・・・残念ながら人件費を節約するために合理化、機械化が進む今日ではもはや適用されない。・・・『サラリーマンは気楽な稼業』だった時代は終わってしまったのだ」(記事 探知機)。

427 老いと死 新聞切り抜き 1998.2.12

 「・・・老いて死んでいく者の内面は伝えられにくい。老人たちはみとる側の都合に合わせた『従順な死』を期待されがちだ。・・・おだやかに死を迎えられない老人は少なくない・・・」(ノンフィクションライター 向井承子 福祉ざっくばらん 日経)。

428 接待の構図 新聞切り抜き 1998.2.4

 「・・・今回の日本道路公団や大蔵省をめぐる接待事件について、いまさら倫理を言うつもりはない。そんなことは子供でもわかる。要するに、別に高級官僚ならずとも、その気にさせると、人はだれでも卑しくなれるのだ。接待側は心の底で相手を侮り、される側は卑屈と傲慢(ごうまん)の間でたかり続ける。接待の構図はこんなところ」(精神科医 渡部正行 北海道新聞 心のぞけば)。

429 健全な精神 雑誌切抜き 1993.10.11

 「・・・あんなに流行するとは思えなかったホーキングの『宇宙論』も、ホーキングがコンピューターを使ってロボット。ボイスで外界にアクセスしない限り、誰に知られることはなかったわけだ。コンピューターのおかげで、この地球上では多分最も肉体的にハンディキャップを持つ、一見『カワイソウなヒト』が、実は他の健常者たちの想像し得ないビジョンとマインドの持ち主である、という感動的な事実が明らかになった。健全な精神は健全な肉体に宿る、というのは大ウソだったのだ」(著者不明 デジタルフューチャーの衝撃 日経パソコン)
430 一所懸命 本のコピー 時期不明

 「『一所懸命』は、武家の台頭、領地争い、戦乱という中世の時代相の中で発生した語である。この語が三百年なかい四百年経て徳川時代という安定した封建時代に入って変化した。中世のように、チョン切った敵の首の数で恩賞の多寡が決まる、首の数が多いほど領地をたくさんもらえる、などという血なまぐさい風習は、元禄の庶民にとってはもはや現実ではなく、絵空事演劇などの題材としてしか存在しなくなったとき、そのときに『一所懸命』は『一生懸命』に席を譲ったのである。・・・この歴史の流れは、これからも変わることはあるまい。だから『一所懸命』という使い分けは現代人の慣習とはなり得ないはずである」(朝日新聞社 用語幹事 片岡朝雄 ゆれ動く言葉と新聞 P79)

431 がん告知 雑誌コピー 1987.11.15

 「・・・告知を希望する人たちが、たとえ治る見込みがなくても、59%もいるという現実は、・・・決して小さくない革命の胎動を告げているように思われるのだ。最後にひとつ気になる懸念を記させてもらいたい。それは、告知されたくないと思っている人が医師から告知されてしまったとしたら、これは医師の犯罪にはならないのだろうか。これは告知されたくないと思っている人たちが少数者に転換することによって今後ひんぱんに起こりうると予想される暴力であり、したがつて犯罪ではないのだろうか」(評論家 芹沢俊介 がん告知を希望する人が多数者になったことの意味 ジュリストP74)

432 研究の目的 雑誌切抜き 1988.5.9

 「どうも日本人のモノの捉え方は、一口で有意性を重んじるというか、何かはっきりと目的とか意味を持っていないと、価値を認めない傾向が強いように思いますね。大学などでの『研究』にも、同じようなことが言えます。・・・本当の基礎研究というのは目的を全くもたない、「何に役立つんですか」と聞かれたら、当の研究者が返事に困ってしまうようなものを指すというのが私の定義です」(京都工芸繊維大学学長 福井謙一 日経ビジネス P5 有訓無訓)。

433 お金がないから 雑誌コピー 時期不明

 「・・・街を歩きながら考えた。人の住む環境が悪くなっている。人は環境に順応するから、人の心が荒んできている。それは蓄えもままならない『中流意識』の人ばかりではなく、お金持ちも同じである。『お金さえあれば』『お金がないから』これが生活いや人生の一本柱になりつつある。長い間、心を込めて作る、心を込めて売る、心を込めて運ぶ、が人生の道標であった。企業はこれを方針に人を教育して政庁してきた。しかしこのおおらかな方針は崩壊しつつある」(経営者教育研究所常務取締役 染谷和巳 雑誌税理 ふたたび宇宙と瞑想について vol30 No8 P139)。


                                  雑記帳始末記(34)へ続きます


                                     2013.5.10     佐々木利夫


                       トップページ   ひとり言   気まぐれ写真館    詩のページ



雑記帳始末記(33)

自作のホームページに雑文を発表してから10年になる。資料として作成したメモや切り抜きなどは発表したつど処分しているが、作品にできなかったものが残ったままになっている。それは作品にするだけの力がなかったことを意味しているのだが、それでも私の感性に訴える何かを含んでいたことだけは事実であろう。このまま朽ちさせてしまうのもどこか忍びないものがあり、処分する前にここへ刻むことにした。