「捨てるメモへの墓銘碑・2」の続きです。未整理メモがまだ残っているものですから。

 11 人類の進化
   恐竜の生きていた時代〜今から約6500万年前、魚かネズミに似た人類の祖先の生きていた時代と重複していたのだろうか。

   メモは、これだけで終わっている。恐竜の生存は約一億六千万年ほど続いたと言われている。まさに生物界の王者であり進化の絶頂である。それに比べて哺乳類の末端にいた人類の祖先の何とみじめな存在であったことか。私はこのメモを、何を感じて残したのだろうか。進化の頂点に何らかの意味を探り、その頂点にいた恐竜が絶滅してしまっている現実と、繁栄の頂点を謳歌しているかのように見える今の人類の姿とを、重ねてみたかったのだろうか。

 12 平和生まない核抑止力競争
    北朝鮮の核開発(核弾頭とミサイルの発射実験)が、抑止力競争の行き着く先を示しているとの新聞投稿があった(2017.9.18、朝日、東京都73歳男性)。その要点は「北朝鮮を核武装に駆り立てているのは、アメリカによる恐怖」であるとし、「・・・核抑止力は、核保有国の指導者たちが『核兵器を使えば共倒れだ』と理性的に考えることが前提とされる。しかし、恐怖心はそうした冷静な計算を不可能にするのではないか」と結論付けるものである。
 言っていることは良く分る。ただ「・・・そう思う」、「そう思うことが正義だ」といくら繰り返したところで、太平洋戦争で犯した日本の現実を投稿者も知っているはずである。投稿者はこの投稿を「平和的な解決に向け、国際社会の英知に期待したい」と結ぶ。正論ではあるけれど、私には実効の裏づけのない空論にしか見えない。


 
  北朝鮮の核開発は依然としてエスカレートするばかりで、アメリカとの対立はいまだに解消の糸口さえ見えてこない。トランプ大統領は今月5日から日本、韓国、中国、フィリピンを回る着任後初めてのアジア外に乗り出した。今日11月8日は韓国に滞在して、国会で北朝鮮批判の演説を行った。明日は中国と会談する。北朝鮮問題は最重要課題と言いつつも、情勢に変化はない。人類だけが「戦争」という解決方法を見出してきた。そしてそれがどこまで正しかったかはともあれ、少なくとも当座の紛争の解決には役立ってきた。暴力はときに争いを解決できるのである。それがどんなに批判されようとも、事実として解決しているという現実を否定することはできない。暴力の結果が、望むことが叶う方向へと向かっているのか、それとも望まない結果を生んでいるのかはともかくとして・・・。

 13 いじめの親への刑事罰
   このメモには、2017.11.23頃の読者からの新聞投稿の切り抜きが5件貼られている。
 @親にも責任 見抜けぬのは怠慢(岐阜県、団体職員、53歳男性)、「・・・我が子のいじめのサインが見えないとしたら、親の怠慢に尽きる。・・・加害者が罪を償うのは当然だ。また、親もそれに準じて扱われるべきだ。・・・」。
 Aいじめ加害者の親にも刑事罰を(千葉県、無職、65歳男性)、「・・・いじめ根絶には、加害者側に厳しく対処すべきだ。・・・加害者本人だけでなく親権者の刑事責任も問う『連座制』を設けてはどうか。・・・加害者側が痛みを感じる社会でないと、いじめがなくなることなどない。・・・」。
 B親子は別 厳罰化にも疑問(神奈川県、NPO法人理事、41歳男性)、「・・・親子といえども行動は一体ではなく、子どもは親の付属物でない。連座制はおかしい。・・・刑事責任ではなく民事責任の中で考えるべき・・・」。
 Cどの命も重いと理解させよう(東京都作業療法士、41歳女性)、「罰(は)・・・根本的な解決にならない・・・。・・・世の中には様々な人がいて、どの命も重いと子どもたちが理解できれば、いじめないでしょう。・・・幼児期から教育し、いじめを早期発見し、・・・その都度、解決を図る。遠回りでも、それしかない・・・」。
 D子供たちの感性磨くことが大切(大阪府、無職、68歳男性)、「・・・罰則を強化したところで、どれだけの抑止力が期待できるだろうか。・・・周囲の大人たちが子供たちと関わりを持ち、ぬくもりを感じる言葉をかけることで、子供たちの感性を磨いていけるのだと思う。・・・」。


 
刑事罰への賛否両論に分かれているが、恐らく私たちの反応も、そして私自身の気持ちも両論にあるような気がしている。遠い昔、高校を卒業して税務教習所という研修機関で一年間、税法や一般的な法律などを学んだことがある。その時に刑法の講師が、刑事罰の意味についてこれと同じようなことを言っていた。極論するなら、刑罰は報復を求める制度なのかそれとも抑止力を期待する制度なのかの対立である。共に正論だ、と位置づけるだけで済むならことは簡単である。ただ、被害者やその家族の心情、加害者の人権、そして宗教的な範囲になってしまうのかもしれないけれど、「罪と罰」をどう理解し整合させるのかなどを単純にミキサーにかけてかき混ぜるだけでは、容易に答えは出てこないような気がする。だからこのメモは放置されたままになっていたのだろうか。

 14 かっこうのヒナの背のくぼみ
    かっこう→託卵→ヒナ→本来の卵より早く孵化→ヒナの背中にくぼみあり
    かっこうの成鳥は自分の卵を他の種の鳥の巣に産むという。そこにある他の種の卵より早く孵化したかっこうのヒナは、背中のくぼみを使って、まだ孵化していない他の種の卵を巣から排除して落とすという。そうして自分だけが生き残り、託卵された親鳥もかっこうの卵をわが子と誤解して育てるのだそうである。

  
 託卵はかっこうだけに特有な育児方法ではないと聞いたことがある。また、鳥類だけの固有の習性ではないようだが、ヒナは孵化して最初に目に入ったものを親と認識するらしい(刷り込み)。それで親鳥もせっせと孵化したヒナにエサを運び、ヒナも熱心にエサをねだるらしい。他を抹殺してでも、自らの生存を図る、そしてそのことで自らの種の存続を図ろうとする。育児の期間を放棄することで、産卵数の増加を図ろうとしているのだろうか。寄生と言えば一種の寄生かもしれないが、人間世界以外でも生存競争は常に過酷だということなのだろうか。


                                     2017.11.8        佐々木利夫


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捨てるメモへの墓銘碑・3