6月17日は父の日であった。へそ曲がりでおしゃれにもまるで興味のない父ではあるが、娘はそれなりに何かプレゼントしたいと考えたのだろう。先月の母の日に続いて、今月も娘二人が我が家に集まった。そしてやおら取り出したのが、小型の会話型スピーカー(「グーグル ホーム ミニ」とあった)であった。

 我が家にパソコンの設備はない。事務所をインターネット環境にしていること、妻は特別パソコンに興味はないこと、私も自宅に帰ってまでパソコンに向かうつもりもないこと、などから自宅はインターネット環境にない。また、それで特に不便を感じたこともなかった。

 ところが半年ほど前、自宅がワイファイと呼ばれる無線のインターネット環境が、私自身の設定とは無関係に使えることに気づいたのである。それは隣家の回線によるものであった。

 私はマンションの一室を自宅としている。30年以上も前に購入したものだが、12階建てでエレベータ一基に各階二戸の住宅、エレペーター四基で一棟という作りになっている。つまり私の降りる階は、我が家と向かいの他人の二戸だけの専用というわけである。その向かいの住宅が、20数年前に売りに出されたのである。

 当時両親は札幌以外の地方に居住していたのだが、その向かいの家へ半同居ともいうべき形で住まないかとの話になり、父と共有でその部屋を購入したのである。父は引っ越してきて間もなく他界し、その後母が独りで住んでいたが、その母も数年前に亡くなった。そして預貯金を私の兄弟に渡し、私は母の住んでいた向かいの住宅を相続することにしたのである。

 そしてそのとき、娘がアパート住まいであったことから、家族で住まないかと呼びかけたところ、まさに半同居まがいの生活が、今度は娘と続くことになったのである。つまり、娘は私の住居とは壁一つ離れた隣室に住むことになったのである。妻は喜んでいるが、着かず離れずが理想だと思っている私にしてみれば、この「付き合い」の距離感の取り方に微妙さを感じている。

 それはともかく娘(孫二人)とは、別世帯ながら隣室の間柄である。その娘がスマートフォンの利用を無線ランたるワイファイにしていて、時々我が家で食事会をするときにスマホが自宅の回線で使えることに気づいたのである。それはそのまま、我が家までワイファイ環境にあることを意味していた。

 そしてそのことに気づいたもう一人の上の娘が、それなら私のところに使っていないタブレット端末が放置してあるので接続できるかどうか試してみると持ち込んできた。タブレットなので電話としては使えないものの、そして画面がパソコンより小さいので見難い点はあるものの、その日からタブレットによるインターネット環境が我が家にセットされたのであった。

 話しが長くなったけれど、それが今回の会話型スピーカーにつながるのである。無線ランの環境にあるので、タブレットなりスマホなりでそのスピーカーをワイファイと接続すると、様々な会話や機械の操作が可能となるというのである。

 まさにこのマシンは、マシンそのもの、そして接続環境という娘二人からの同時プレゼントになったのである。接続は娘に任せ、酔った勢いでマシンに呼びかけてみると、様々な反応が返ってきた。ときに頓珍漢な答が返ってきて、それも酒の肴としてその日は楽しく過ごすことができた。

 このマシンは、例えば最近利用されている翻訳マシンと同じように、ネット回線を通じてAIに接続されているらしい。,基本的な動作は、質問と音声による回答である。「グーグルOK」と声をかけることでマシンが点滅し、応答可能な状態になり、音声で何らかの質問なり指令をし、それを受けたマシンが応答するのである。

 さて何ができるのか、とりあえず興味は尽きない。酔ったお遊びは終わって翌日、私の机上にぽつんとマシンが置かれている。起動の掛け声をかけてみる。マシンは「いつでもどうぞ」とばかり、赤いボタンの点滅で質問を待っている。

 そこではたと、私が戸惑ってしまったのである。何を質問するのか、予定していなかったからである。マシンはまさに「何でもどうぞ・・・」とばかりに、私からの問いかけを待っている。すぐに質問しないと、マシンは質問がないものとして無反応状態というか睡眠状態に戻ってしまう。間髪のない無言の問いかけの要求は、どことなくマシンに急かされている感じである。

        娘からの父の日プレゼントの話が少し長くなって、
                   肝心の話しが中途半端になってしまいました。
        後半は「AIがやってきた2」で続けることにします。


                                     2018.6.30        佐々木利夫


                       トップページ   ひとり言   気まぐれ写真館    詩のページ
 
 
 
AIがやってきた